性犯罪と飽和療法

性犯罪抑止、もしくは再犯の予防方法として飽和療法というものがある。

そうした療法についてネットで調べると、下記のような記述にあたることが多い。

法政大学の越智教授の論文に海外論文が大量にあった。有害でないという検証、エロいものを見ることで犯罪が抑止される効果があるかどうか、オナニーしたら落ち着くということを科学的に検証する研究。
これは、マーシャル教授を中心にアメリカ西海岸で精力的な研究であり、好みのエロ本漬けにして犯罪する気をなくさせるという実験である。
もっとも効果が高いのはペドファイルで、ロリグラビアを大量に与えると再犯率は3%まで落ちる。去勢の再犯率は15%だということと比べると圧倒的。
アメリカの議会では取り上げられているのに、日本ではまったく取り上げられていない不思議。法務省の最新の治療方法についてのリストでも、飽和療法は載っていなかった。検討もされてない。

Googleで「飽和療法 性犯罪」を検索すると、ほとんどが上記を引用しているのだが、これは重大な誤解だと言わざるを得ない。

どこから誤解がひろまったのかは後述するとして、ひとまずこの言説を検証することにしてみよう。


法政大学の越智論文は、下記から参照できる。

  • 子供に対する性犯罪に関する研究の現状と展開(1)
  • 子供に対する性犯罪に関する研究の現状と展開(2)

飽和療法について言及されているのは(2)のp91 – p92 で簡単な言及にとどまっている。

(行動療法のうち、再条件づけを用いる手法のひとつとして)性的に喚起されないような状況下(マスターべーションの直後など)で子供に対する性的なファンタジーを強制的に想起させる飽和(satiation)療法(Marshall & Barbaree, 1978)などがある。これらの手法についてもやはりその効果が実証されたとする研究はあまりない。
ただ, Bussiere(1996)の大規模な研究において,犯行飽和療法については,ある程度の実証がなされており(Johnson, Hudson, & Marshall, 1992) ,アメリカでは,性犯罪者の処遇場面で比較的ポピュラーに用いられている行動療法の一つである。

端的にいえば、飽和療法というのは「好みのエロ本漬けにする」療法ではなく、賢者タイムのけだるい時間に「この幼女ってどうよ?」と迫る、ある意味うっとおしい療法であり、効果も実証されていない。後段にある「犯行飽和療法」というのも確か「犯行の動機や行動、心理を追憶させる」ものだったかと思う。

さらにいえばペドファイルに効果が高いということも記載されておらず再犯率にいたっては別ページの研究結果を転記したに過ぎない。

ロリグラビアを大量に与えると再犯率は3%まで落ちる
→別の再発防止プログラムによって「1年以内の再犯率が3%になった
去勢の再犯率は15%
→セラピーと化学的去勢を行なったグループの再犯率が15%
※外科的去勢の場合、別の研究では3%。効果がないとする研究者もいる

こうした勘違いがどこから来たのか。どうもメイザーズぬまきち講演会メモ というまとめが元になっているようだ。

Twitterのまとめをどうこういう気はもちろんない。むしろ無自覚にRTして広める方が、昨今では無責任のそしりをまぬかれないだろう。

伝聞を周知するだけならば、それは無責任なマスコミとなんら変わるものではないし、不見識に大して不見識で返すというのもいただけない。

とりあえず「反論するならソースぐらいちゃんと読もうよ」というところか。

「性犯罪と飽和療法」への2件のフィードバック

    1. レスが遅くなってごめんなさい。

      確証というか、正確な統計があるわけではありませんが、

      • 適度なガス抜き(エロ本とかエロ DVD)の存在
      • 性犯罪に代表される女性への虐待が「恥ずかしいこと」とされる傾向が強い文化

      は一因かと思います。特に後者ですね。

      女性虐待というと語弊がありますが、全般的に「弱者に優しい」「敵に塩を送ることを美徳とする」ような文化が男性誇張主義と直結しない文化では性犯罪は「恥ずかしいこと」であるという認識が強くなるかと思います。

      男性誇張主義(以下、マチズム)が強調される文化というのは、屈服させることが正義であり、支配することが美徳であるととられる傾向がないとは言えません

      ホの字さんはいかがお考えでしょうか。反応が遅く失礼かとは思いますが、ご意見伺えれば幸甚です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください